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日米の年金と国籍

海外年金相談センター 市川俊治

海外年金相談センター 市川俊治

カテゴリー:年金・保険

マイナンバー制度が始まります

日本では13年5月、「社会保障・税番号制度」通称「マイナンバー法」が国会で成立、本年9月には「改正マイナンバー法」が成立しました。そしてその運用が来年16年1月から順次開始されます。マイナンバーとは、納税、年金、健康保険等の手続きをスムーズに行うため、日本に住んで住民登録をしている日本人および外国人一人一人に割り当てられる社会保障と税の共通番号のことです。その内容と海外在住者への影響をご説明してまいります。

そもそもマイナンバー制度実施の促進剤となったのは、07年2月に発覚した5万件の消えた年金記録問題でした。そのほかにも、高齢年金受給者の死亡後受給継続問題、生活保護の不正受給者問題など、さまざまな行政上の問題点が明らかになりました。これまで個人情報は、行政機関ごとに個別に付番管理されてきました。まさに縦割り行政の結果でした。そこで、共通番号で個別の情報を管理するという観点から、マイナンバー法の成立に至ったわけです。

実施のスケジュール

マイナンバー制度の実施スケジュールは、まず今年10月、市区町村から国民にマイナンバーを記載した「通知カード」が配られます。それは番号と基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)だけが記載されたカードです。住民票に記載された住所の世帯主あてに、世帯全員分が簡易書留で送付されます。

16年1月からは希望すれば「個人番号カード」が申請可能となります。表に顔写真と基本4情報、裏にマイナンバーが記載されているカードです。それ1枚で身分証明書として利用できます。マイナンバーは居住地の市区町村長が指定するランダムな12ケタの数字で、一度指定されたマイナンバーは原則変わることはありません。

運用対象分野

マイナンバーの運用開始は16年1月からで、まずは「社会保障」「税」「災害対策」の3分野に限定として国や地方の行政手続きなどで使われるようになります。「社会保障」では医療保険の保険料徴収、年金の資格取得、給付などの場合、「税金」では税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書などに記載することになります。

18年からは銀行の個人預金口座と番号の紐付けが任意ながら開始されます。21年から義務化される可能性が高いともいわれています。マイナンバーを口座に紐付けすれば、税務署は不正の疑いのある人の口座情報を銀行から得やすくなるわけです。なお、マイナンバーと年金が紐付けされることは今回の情報漏えい問題もあり、当面の間見送りとなりました。今後、医療、戸籍、パスポート等色々な分野マイナンバーを使えるようにすることが検討されています。

政府はこの制度の期待される効果として次の3つを上げています。

1つには、「公平・公正な社会の実現」です。国民の所得状況等が把握しやすくなり、税や社会保障の負担を不正に免れることや不正受給の防止、さらに本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になるとしています。

2つめは、「国民の利便性の向上」です。これまで、市役所、税務署、社会保険事務所など複数の機関を回って書類を入手し、提出するということがありました。マイナンバー制度の導入後は、社会保障・税関係の申請時に、課税証明書などの添付書類が削減される場合があるなど、面倒な手続きが簡単になるというわけです。

3つめは、「行政の効率化」です。マイナンバー制度の導入後は、国や地方公共団体等での手続きで、個人番号の提示、申請書への記載などが求められます。国や地方公共団体の間で情報連携が始まると、これまで相当な時間がかかっていた情報の照合、転記等に要する時間・労力が大幅に削減され手続きが正確でスムーズになります。

情報管理

一方で心配されるのが、個人情報の漏えいです。米国では「ソーシャルセキュリティ番号」に絡んだ犯罪、詐欺事件が多発していることは皆さん周知のとおりです。又、マイナンバーを使って自分の情報がどのようにやり取りされるのか心配されるところですが、17年1月から政府が開設する個人サイト、「マイナポータル」がスタートします。「マイナポータル」は、マイナンバーの付いた自分の情報の履歴や、行政機関が持つ自分の個人情報、行政機関から自分への連絡等が確認できます。マイナンバー関連の情報をどの役所がいつ、誰とやり取りしたかを番号の主に知らせる機能も含まれています。

海外在住者への影響・注意点

最後に海外在住者への影響・注意点ですが、一言でいえば、海外に在住の邦人の皆さんはマイナンバー制度の開始に際して現時点では特に影響はありませんし、特別の対応をする必要はありません。

日本に帰国し住民票を作成した時に初めて、マイナンバーが交付・通知されます。マイナンバーが一度交付されれば、その後に海外赴任をして日本に住民票が無くなっても、帰国した時に同じ番号をそのまま使えます。

日本に住民票を残して海外赴任されている方は、15年10月以降通知カードが留守宅に届きます。留守宅にどなたも住んでいらっしゃらない場合は、簡易書留なので転送不要となりカードは市区町村に戻ります。帰国した際再申請をして入手することになりますが、有料となります。海外に住みながら住民票を日本に残され、その為国民健康保険料や介護保険料を納めている場合、マイナンバーがなくとも保険料が収められていれば当面は特に問題は無いようです。

18年からは銀行での個人預金口座へのマイナンバーの登録が始まります。当初は任意ですが、21年から義務化される可能性が濃厚といわれています。その場合、マイナンバーを保持していないと海外に居住していることが判明し、口座の解約となりかねません。この点の取り扱いは銀行により異なりますので確認され、備える必要があります。年金を日本の口座に振り込んでいる場合などは、一時帰国された際、「非居住者口座」の開設を検討されるのも良いかもしれません。さらに18年からマイナンバーを戸籍に適用することが検討されています。現在は結婚届、離婚届、パスポート申請のほか、年金の受給申請や遺産相続などの行政手続きで戸籍が必要です。戸籍にもマイナンバーを適用すれば行政機関がオンラインで戸籍情報をやり取りできるようになり、手間が省かれます。

また米国籍を取得以降も国籍喪失届を提出することなく、その結果戸籍に引き続き登録されている方は、当面は問題ありませんが、それぞれの行政機関との情報の連携が進むと何らかの対応が迫られることも将来発生するかもしれません。将来マイナンバーを活用することにより、日本国内の行政手続きと海外の総領事館の領事業務を連携させ、在留邦人の方々の行政手続き負担の軽減と利便性の向上が計れることがおおいに期待されます。例えば、年金受給者の方(日本国籍)が毎年領事館から取り寄せて日本年金機構に提出している“在留証明”は提出不要となることでしょう。また、在留届の精度が高まりその結果、海外在留邦人の災害時の安否確認や不効率な在外選挙の選挙人登録制度が大きく改善されることでしょう。

マイナンバーを育てよう

マイナンバーの活用分野はどんどん拡充されていく予定です。また、手続きそのものが簡便化されることは、生活者にとり大変望ましいことです。これまで自治体の窓口まで直接行かなければできなかった行政手続きが、日本在住者は自宅や外出先でも行えるようになるわけです。海外でも同様な利便性が享受できるよう海外在住の皆様も、お一人お一人がマイナンバー制度に関心を持ち、マイナンバー制度を大きく育てていただきたいものです。

 

海外年金相談センター 市川俊治
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