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日米の年金と国籍
10/29/24
遺族年金
亡くなられた方の加入状況などによって、「遺族厚生年金」「遺族基礎年金」のいずれか、または両方の年金が給付されます。遺族年金の受給は年金加入期間25年以上が条件ですが、幸い米国にお住いの方は「日米社会保障協定」及び「カラ期間」のお陰で加入期間が25年未満の方でも受給資格が生じます。遺族年金は残された家族にとり大切な生活資金です。是非制度を理解されておかれることをお勧めします。
1どんな人が亡くなった時に遺族年金は支給されるのか
(1) 遺族厚生年金の受給要件
厚生年金の加入者(被保険者)又は加入者であった方が、次のいずれかの要件に該当する場合、死亡した方によって生計を維持されていた「配偶者」、「子」等が受け取ることが出来ます。
①厚生年金の加入者(被保険者)である間に死亡したとき
②厚生年金の加入者であった間に初診日がある病気やケガが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
③1級・2級の障害厚生年金の受給者が死亡したとき
④老齢厚生年金の受給権者であった方又は老齢厚生年金の受給資格期間をみたして死亡したとき(いずれも保険料納付期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます)
①は米国在住者で日本の厚生年金加入者は当然に該当します。これ以外に厚生年金加入者であった方がその後米国に移住し、米国年金加入中に亡くなった場合は日米社会保障協定により日本の制度に加入していたものと見なされ遺族年金を支給されます。
② は①で説明した通り、米国年金の加入期間中は条件を満たせば日本の年金
制度に加入していたとみなされますので、米国企業に勤務中の初診日の記録を書面で残しておくことは重要です。
③ は記載の通りです。
④ は遺族年金の受給資格は加入25年以上が条件です。一方米国にお住まい
の方の場合は受給資格の算定上「日本の年金加入期間」+「カラ期間」(日本国籍で海外に在住していた20歳から60歳までの期間)+「米国年金加入期間」を合算して25年以上あれば受給資格を満たすことが出来ます(重複する期間は除く)。ですから多くの方が日本の遺族年金の受給資格を取得することが出来るわけです。例えば亡くなられたご主人の日本での年金加入期間が少ない場合でも、米国年金やカラ期間を加算すれば遺族年金を受給できますので是非見直されては如何かと思います。
(2)遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金は、次のいずれかの要件に当てはまる場合、死亡した方によって生計が維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることが出来ます。
①国民年金の加入者(被保険者)である間に死亡したとき
②国民年金に加入していて今は加入中ではないが、60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
③老齢基礎年金の受給権者であった方が又は老齢基礎年金の受給資格期間をみたした方が死亡したとき(いずれも保険料納付期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます)
なお遺族厚生年金及び遺族基礎年金の受給要件①、②については次の保険料納付用件があります。つまり死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることが必要です。
注意していただきたいのは、②の要件です。以前国民年金に加入していたが受給資格期間に満たない方で、年齢が60歳以上から65歳未満である方が亡くなった場合、亡くなられた方が日本に住んでいれば遺族基礎年金を受給でき、海外に住んでいると受給できないことになります。これは、海外在留者の方にとって不公平な要件ですね。この件は別途取り上げみんなで改善を目指しましょう。
2.どんな人が遺族年金を受給できるのか
(1)遺族厚生年金を受け取れる遺族の要件
遺族厚生年金を受け取れる可能性のある遺族は、亡くなった人に扶養されていた妻、子、夫、父母、孫、祖父母です。このうち最も順位の高い人(後で説明します)に遺族年金が支給されます。
また、「扶養されていた」とは、「一緒に生活し、年収が850万円未満であること」をいいます。遺族の国籍は問いませんが、妻以外の遺族は次の要件も満たす必要があります。
①夫 妻の死亡時に年齢が55歳以上であること。ただし遺族年金は夫が60歳になってから支給されます。
②子、孫 18歳になった後、最初の3月末までの子または孫。(日本でいえば、高校卒業までの子又は孫)
③父母、祖父母 本人死亡の当時、55歳以上であること。ただし、遺族年金は60歳になってから支給されます。
*遺族厚生年金を受ける順位
第1順位 妻、子、夫、第2順位 父母 第3順位 孫 第4順位祖父母の順となります。第1順位の中には
①子のある妻
②子
③子のない妻
④55歳以上の夫の順となります。例えば妻が再婚して遺族年金をもらえなくなったときは、子供がもらえるようになることがあります。子と夫の関係も子がもらえなくなったら夫がもらうことになります。第1順位の遺族がいるときは第2順位以下の遺族は年金を受けることはできません。
(2)遺族基礎年金を受け取れる遺族の要件
遺族基礎年金を受け取れる遺族は、亡くなった人により生計を維持されていた「子のある配偶者」か「子供」です。これまでは母子家庭が主な対象の制度で、子を持つ夫が妻に先立たれた場合は支給されませんでしたが、時代の流れに従い、2014年4月からは「子供を持つ夫」つまり父子家庭になった場合も遺族基礎年金を受け取れるようになりました。
また国民年金の独自給付として「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。
国民年金の第1号被保険者(簡単に言えば自営業者、非勤労者の学生、無職の方)の遺族である配偶者に子供がいない場合は、遺族基礎年金は支給されません。遺族基礎年金が受けられない場合には「寡婦年金」又は「死亡一時金」が支給されます。
寡婦年金の受給資格は
①第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が25年以上ある夫が亡くなった場合
②10年以上継続して婚姻関係(事実婚を含む)にあり、生計を維持されていた妻であること
③死亡した夫が老齢基礎年金を受給してないこと又は障害基礎年金の受給権がないこと。寡婦年金の支給期間は60歳から65歳になるまでの有期年金です。寡婦年金の年金額は、夫が生きていたらもらえるはずであった老齢基礎年金の4分の3です。死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けることなく亡くなったときは、その方と生計を同じくしていた遺族(1配偶者2子3父母4孫5祖父母6兄弟姉妹の中で優先順位が高い方)が受けることができます
死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。保険料納付月数が36月以上180月未満 120,000円 420月以上 320,000円です。当然ながら遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。また寡婦年金を受けられる場合は、死亡一時金かどちらか一方を選択します。死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。
3.遺族年金の給付の種類と年金額
(1) 遺族厚生年金の場合
*遺族厚生年金の年金額は、亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額のほぼ4分の3です。
また65歳以上で老齢厚生年金を受ける権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るとき以下の①と②の額を比較し、高いほうが遺族厚生年金の額となります。①亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額②「上記①の額の2/3」と「ご本人の老齢厚生年金の額の1/2」を合計した額です。
*中高齢寡婦加算
遺族厚生年金の受給要件で短期用件(①から③)に該当する夫、又は厚生年金の加入期間が20年以上ある夫の死亡時に40歳以上65歳未満の妻が受ける遺族厚生年金には、中高齢寡婦加算(612,000円)が加算されます。ここで注意すべきは、日米社会保障協定の発効により、米国年金加入期間と厚生年金加入期間とを通算して20年以上あれば厚生年金加入期間が20年未満でも加入期間に応じた額が寡婦加算として支給されることになりました。(2005年11月以降)例えば夫の厚生年金の加入期間が10年で米国年金加入期間を加算して20年以上になれば半分の306,000円が支給されます。
*65歳以上になると経過的寡婦加算として妻の生年月日により一定額が支給されます。遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに65歳までの中高年付加加算に代わり加算されます。これは、老齢基礎年金の額が中高齢付加加算の額に満たない場合が生じるときに、65歳到達後における年金額の低下を防止するために設けられたものです。
(2)遺族基礎年金の場合
(1)支給額は816,000円+子の加算額(Ⅰ人目及び2人目の子の加算額は234,800円、3人目以降は一人当たり78,300円))(2)子が遺族基礎年金を受給する場合子が一人の場合は816,000円。加算は第2子以降について行い、子一人あたりの年金額は、上記による年金額を子供の数で除した額。