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中泉拓也

Tesla の衝撃

Monument valley

 

渡米前の2019年には日本でもTesla が話題になっていました。ただ、単なる電気自動車ということで、実物をほとんど見ることもなく、どうしてこれだけもてはやされているかもわからなかったです。実はトヨタ自動車を中心に日本の系列についての取引や産業分析で博士論文を書いたこともあり、トヨタ自動車は学者的にもすごい会社だと思っています。にもかかわらず自動車はほとんど日本で運転したことがなかったので、10年前にサンディエゴに2年滞在した時、初めて本格的に運転したのが、トヨタ自動車のMatrixでした。個人的には本当に満足していて、無事故で快適に過ごせたので、更にトヨタ自動車のファンに。それで今回もトヨタ自動車を選択し、渡米から搭乗拒否までは、ハイランダー、搭乗拒否後の2週間はRAV4に乗っていました。そういうわけで実感としてもTeslaに関心はそれほどなかったのですが、それでも渡米して初めてTeslaの姿も見るようになりました。

 

渡米中がまさにコロナ禍に重なったため、カリフォルニアのディズニーリゾートはずっと閉鎖。レゴランドもアトラクションは全部閉鎖。シーワールドは全く行けず。年間券買ったのはサンディエゴ動物園だけでした。飛行機での旅行も出張も全くできず、ましてやクルーズ旅行ということで、10年前に楽しめた観光や東海岸への出張はほぼ不可能でした。それでもさすが西海岸、さらに地上の楽園サンディエゴ。自然が豊かでソーシャルディスタンスも十分とれるので、サーフィン、テニス、ゴルフ、トレッキングといったアウトドアスポーツや自動車旅行で十分満喫できました。

 

渡米して3ヶ月ほど経って、サンディエゴの西部の山岳地帯のジュリアンを経由して東のアンザボレゴ砂漠に行ったのですが、10年前と比べて道がとてもよくなったのと、2015年あたり製造のハイランダーですが、高速安定性が非常によくなっていて驚きました。運転も慣れたので、遠出できそうだということで、ロックダウンが緩和され、州間移動も緩和された2020年11月に、ラスベガス経由でグランドキャニオン、モニュメントバレーまで行き、帰りはペイジを経由して、ホースシューベントとバーミリンクリフ国定公園のバックスキンガルチへ。そしてセントジョージからラスベガス経由で帰宅しました。抽選倍率が高いウエーブも空いているかよくわからなかったザイオンキャニオンも断念しました。モニュメントバレーやアンテロープキャニオンも閉鎖していました。ただそれでも十分たのしめた旅行でした。特に、モニュメントバレーは公園の周りからの見学でしたが、フォレストガンプヒルからの眺めが最もインスタでも人気のある写真ですし、宿泊したGoulding’s Lodgeがモニュメントバレーを映画「駅馬車」で、世界に紹介したGoulding’s夫妻の家があったところで、その経緯を聞いて園内観光する以上に感銘を受けました。その件も追って紹介したいと思います。

 

また、2021年となり、パームスプリングスからジョシュアツリー国立公園、そしてソルトン湖経由で帰宅。ついにサンフランシスコのロックダウンが終了した3月にはヨセミテとサンフランシスコへ、サンタバーバラ経由で帰宅。搭乗拒否されてからもむしろ旅行は増えて、デスバレー・マンザナー強制収容所、セコイヤ国立公園と行ってきました。最後のセコイア国立公園への旅行も一生忘れないものになりました。ということで、自動車旅行三昧の渡米で、非常に充実してました。COSTCOとWalmartで買い出しして、宿で食べるというやり方で、非常に安く旅行できたのも有り難かったかったです。砂漠のまっすぐな道をOfficial髭男dismのILove..を聴きながら90マイルくらいで飛ばしていくとモニュメントバレーに到着したのは、10年の疲れも吹っ飛ぶくらいの爽快感です。

 

さて、モニュメントバレーまでの旅行の帰途、ラスベガスからLAに向かう途中、15号線を走っていた時です。コロナ禍で交通量も少なく、80マイル以上で走行しているわけですが、もっと高速で走行するドライバーも結構います。その時はベンツとBMWが100マイル近くで2車線の15号を抜きつ抜かれつして飛ばしていました。日本の高速道路のように片側には2車線しかないので、抜くのも大変なところ。速度が出ないトラックも多く走っている中で、抜くのは結構たいへんです。その中で抜きつ抜かれつしながら飛ばすのも大変だなあと思って見てました。

 

そのときです。それら二台よりもさらに早いスピードで、トラックとの狭い間隔の合間を華麗なコーナリングであっという間にベンツとBMWを追い抜いて行った自動車がありました。???とおもったら、それがTeslaだったんです。

 Tesla

 

自身の研究以外で、米国での最も重要な体験の一つがその瞬間でした。その時気づいたのは、内燃機関は動力系と制御系(ブレーキやハンドル)が全く別なのに対して、電気自動車は完全に一元管理できるので、スピードだけでなく、コーナリングや制御も圧倒的に内燃機関の自動車を凌駕することが可能だということです。つまり今後内燃機関の自動車は走行性に関して絶対EVに勝てないんだと。その瞬間、なぜTeslaが他の自動車の全ての時価総額を上回っていたのかが理解できました。例えていうなら、プロペラ機のメーカーとジェット機のメーカーほどの違いがその時点で発生していたわけです。カリフォルニアでは新車の10%以上のシェアをテスラが持っていますが、そもそも高級車の市場でポルシェもベンツもテスラに市場を奪われていた時のことですね。

 

その後もテスラは多くの場所で見ましたし、ディーラーにも行き、完全にファンになってしまいました。帰国して日本でも少しづつ増えてきています。前述のように私自身はトヨタの大ファンで、10年前の渡米でも今回もトヨタに乗っていて、今回利用したハイランダーとRAV4はこの10年の進歩がわかる名車でしたが、それでもEVに勝つのは難しいという印象を持ちました。

 

昨年までは単にエコという意味で電気自動車を促進していた日本各社ですが、最近ようやくこのEV車の性能での優位性を認識し始めたようです。既に日産はEV車を数年前から供給していますが、停車するところを見ると、駆動系と制御系の一体化がまだまだという状態でした。それが最近のCMではこの駆動系と制御系の一体性を前面に押し出したCMを打ってくるようになっています。

 

一昨年以来、そう言った危機感を日本でも共有したいということで、noteやfacebookでも宣伝していました。なかなか響かないと不安に思っていたところ、昨年末(2021年12月14日)、遂にトヨタが満を持して、EV車を2030年までに30車種全世界で300万台販売するという記者会見を行ったのは、この危機感の現れだと思います。これでようやく我が国の自動車メーカーもガラ携のようにガラパゴス化して終了するという危機から少し離れたのではと期待しています。

 

ただ、これまでの内燃機関の自動車に比べてはるかに部品点数の少ないEV車にシフトすると、雇用の喪失も深刻で、これからどのように対応していくか、課題はまだまだ多いです。また、まだ日本では環境問題の解決のためにEV車が促進されるべきと考えている人がまだまだ多く、日本でのEV普及にはまだハードルが多い気がします。例えば、まだまだEV車に関するネガティブな話も多いです。上記の本質的な優位性よりも、EVが寒冷地に弱いといった指摘や、バッテリーが火災に弱いという指摘のほうが多いです。Teslaのバッテリーはまだまだ改善の余地があると聞きますし、そこが日本の自動車メーカーやバッテリーメーカーの伸長の余地があるところですが、寒冷地に弱いはずのEVがノルウェーで広まっている事実も認識して欲しいです。また、テスラがトラックに追突されたあとの現場を目撃したことがあるのですが、トラックが大きく凹んでいるにもかかわらず、テスラは無傷に近くてびっくりしたことも書き留めたいと思います。実はエンジン部分が軽いので、走行を重くしてもいいため、耐久性が非常に強く、非常に安全な自動車という印象を受けました。

 

最後に、Teslaといえば自動運転についても触れたいと思います。日本では教習所が必須なのに対して、米国では教習所はないので、どうしても運転の基本は日本のドライバーの方がしっかりしている印象です。ただし、アメリカ人は危ない時はブレーキを踏むという原則だけは日本より徹底されている印象を持ちます。日本ではブレーキよりもハンドルに頼りすぎる印象があります。米国のドライバーは親切で礼儀も正しく、サンディエゴでは本当に助けられましたが、どうしても急発進、急ブレーキのドライバーが多いですよね?

 

ところが、パームスプリングスへ行く途中の高速15号。車間距離を適切にとって、安全そうに見える自動車の後ろを選び、余裕を持って減速し、ゆっくり加速という理想的な運転をしているTeslaを見かけたんです。安心したので、そのTeslaの後ろをついて行きました。そして最後、別れる時に運転席を見たら、ドライバーは... 何と、寝てました。最初の衝撃ほどではなかったですが、自動運転を初めて認識した瞬間です。ドライバーや道路の特性上、アメリカの方が自動運転も普及するのが日本より早いのではと思います。ドライバーの能力が高く、道も狭い日本の方が自動運転のようなハイテク技術の導入が遅れるというのは皮肉です。紙やアナログで世界を席巻していて、デジタル化が遅れたことも同様ですが、そういう面もあることは気に留めておきたいと思います。

 

写真提供元:by 中泉拓也