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尾崎真由美会計事務所 - 西海岸の日系コミュニティにとっての税務の百科事典

尾崎 真由美  

尾崎 真由美  

カテゴリー:ビジネス
18001 Old Cutler Rd., #454, Miami, FL 33157
TEL: (877) 827-1040

【2026年版・全米対応】 日本へ本帰国する前に確認したい米国の出国税(Exit Tax)


米国で長年生活し、勤務や事業をされてきた方が日本への本帰国を決断した際、
確認しておきたい税務項目の一つが、米国の出国税(Exit Tax/Expatriation Tax)です。
ただし、日本へ帰国するだけでExit Taxがかかるわけではありません。

Exit Taxが問題となるのは、原則として、
・米国市民が米国市民権を放棄する場合
・米国税法上の「Long-Term Resident」に該当する
グリーンカード保持者が、そのステータスを終了する場合 です。

なお、グリーンカード保持者については、
日本へ帰国しただけ、またはグリーンカードの有効期限が切れただけで、
直ちにExit Tax上のExpatriationが成立するとは限りません。

原則として、Form I-407による放棄、行政・司法上の最終的なステータス終了、
または租税条約に基づく外国居住者としての取扱いを適切に主張・通知した日などを確認する必要があります。IRSのForm 8854 Instructionsでも、Long-Term Residentの終了日はこれらのケースに応じて定められています。

さらに、その方が一定の条件を満たしてCovered Expatriateに該当すると、
実際には売却していない資産についても、
原則として放棄日の前日に時価で売却したものとして課税される可能性があります。

市民権やグリーンカードの正式な放棄手続きを行った後では、利用できる対策が大きく限られます。

日本への本帰国とともに市民権またはグリーンカードの放棄を検討している場合には、
手続きを始める前に、
米国での居住・グリーンカード保有年度
全世界の資産および負債
資産の取得価額
過去5年間の米国税務申告
退職口座やTrust
放棄時期
などを確認することが重要です。

グリーンカード保持者全員が対象になるわけではありません

グリーンカード保持者についてExit Taxの対象となり得るのは、
米国税法上のLong-Term Resident(LTR)に該当する方です。

Long-Term Residentとは、原則として、グリーンカードのステータスを終了する年を含む直近15課税年度のうち、少なくとも8課税年度において米国のLawful Permanent Residentであった方をいいます。

ここで重要なのは、単純な「8年間」という年数ではなく、8課税年度で判定することです。
また、原則として、その年の一部だけLawful Permanent Residentであった場合でも、
1課税年度として数えられる可能性があります。
そのため、年の途中でグリーンカードを取得した場合でも注意が必要です。

また、租税条約に基づき相手国の居住者として扱われ、
米国に対してその取扱いを適切に主張・通知し、条約上の特典を放棄していない年度は、
一定の場合、8課税年度の計算から除外されます。

そのため、「グリーンカードを取得してから8周年を迎えたか」だけで判断するのは適切ではありません。
一方、米国市民が市民権を放棄する場合には、このLong-Term Residentの8課税年度判定はありません。


「Covered Expatriate」と判定される3つの条件

Long-Term Residentがグリーンカードのステータスを終了する場合、または米国市民が市民権を放棄する場合、原則として次のいずれか1つに該当するとCovered Expatriateとなります。

1.純資産要件
放棄日時点における全世界の純資産額が200万ドル以上である場合です。
米国内の資産だけではありません。

日本を含む世界各国の、
不動産
預貯金
株式
投資信託・ETF
事業持分
退職口座
一定の保険契約上の権利
暗号資産
その他の財産

などについて、Form 8854および関連規則に基づき評価し、負債を考慮して純資産を確認します。

2.納税額要件
放棄日前の5課税年度について、年間のAverage Annual Net Income Tax Liabilityが
毎年定められる基準額を超えている場合です。

2026年に放棄する場合の基準額は、5年間の平均が$211,000超です。
IRSの2026年インフレ調整額でも、この基準額が$211,000と定められています。
これは年収や源泉徴収額ではありません。
また、課税所得や実際の還付・納付額そのものでもありません。

原則として、放棄日前5課税年度の米国連邦所得税について、Form 8854の計算方法に従い、
Total Taxから一定のForeign Tax Creditを考慮したNet Income Tax Liabilityを基礎として平均額を計算します。

そのため、
「年収が高いからCovered Expatriateになる」
「年収が低いからならない」
とは一律には判断できません。

この金額はインフレ調整により毎年変更されます。

3.税務コンプライアンス要件
Form 8854において、放棄日前の5課税年度について、
必要な米国連邦税務上の義務をすべて果たしていることを証明できない場合です。

具体的には、放棄日前5課税年度について、
必要な所得税申告
雇用税・贈与税等の申告
国際情報申告

などを提出し、必要な税金、利息およびペナルティ等を含む
連邦税務上の義務を履行していることをForm 8854で証明できる必要があります。

したがって、
・純資産が200万ドル未満
・5年間の平均納税額も基準以下

であっても、このCertificationができなければ
Covered Expatriateとなる可能性があります。

Form 1040だけではなく、該当する場合には、
Form 8938
Form 5471
Form 3520
Form 3520-A
Form 8621
Form 8865
その他の国際税務情報申告
などについても確認が必要です。
 

      FBARは別制度として確認します

FBAR(FinCEN Form 114)についても、過去の提出状況を確認することをおすすめします。

ただし、FBARは一般に、Form 8854における
5年間の連邦税務コンプライアンス認証とは別制度として扱われます。

そのため、FBAR未提出だけを理由として自動的にCovered Expatriateになるというものではありません。

一方で、FBAR未提出には別途提出義務やペナルティ等の問題が生じる可能性がありますので、出国前のTax Compliance ReviewではForm 8854とは分けて、提出状況と必要な是正方法を確認することが重要です。

なお、Form 8854のInstructionsでも、米国人として扱われる期間がある場合には、
FBARやForm 8938が必要となる可能性があることが案内されています。

二重国籍者・一定の未成年者には例外があります

出生時から米国と他国の二重国籍である方や、一定の要件を満たす未成年者については、
純資産要件および納税額要件についてCovered Expatriateとならない特例があります。

ただし、「出生時から二重国籍である」というだけで例外になるわけではありません。

出生時から米国と他国の二重国籍である方については、放棄日時点でもその国の国籍を有し、
その国の税務上の居住者として課税され、さらに直近15課税年度のうち米国居住者であった年度が
10課税年度以下であることなど、一定の要件があります。

一定の未成年者についても、原則として18歳6か月になる前の放棄や米国居住年度数等の要件があります。
また、いずれの例外でも、過去5年間の税務コンプライアンス証明が必要です。

含み益への課税「Mark-to-Market」とは

Covered Expatriateに該当すると、原則として、
放棄日の前日に保有資産の多くをFair Market Valueで売却したものとみなして、含み益を計算します。

たとえば、
米国・日本その他の国の不動産
上場株式
投資信託・ETF
未上場会社株式
PartnershipやLLCなどの事業持分
暗号資産
美術品その他の投資資産
などが検討対象となります。

実際には売却しておらず、現金を受け取っていない場合でも、
含み益に対する税金が発生する可能性がある点がExit Taxの大きな特徴です。
ただし、資産の時価総額そのものに課税されるわけではありません。

原則として、
Fair Market Value − Tax Basis = 未実現利益 を計算し、
対象資産全体の純含み益について一定のExclusion Amountを適用します。

2026年のExclusion Amountは$910,000です。
IRSの2026年インフレ調整資料では、Covered Expatriateの
Mark-to-Market課税における減額額が$910,000と定められています。

2026年の$910,000のExclusion Amountは、Mark-to-Market対象資産の純利益を
ゼロ未満にしない範囲で控除され、原則として含み益のある各対象資産へ按分されます。

Deferred Compensation、Specified Tax-Deferred Account、
Nongrantor Trust等の特別ルール対象項目には、同じ方法で適用されるものではありません。

たとえば、Mark-to-Market対象資産全体の純含み益が**$1,500,000であったとしても、
単純に$1,500,000全額**へExit Taxが課税されるわけではありません。

Basis、損失、資産ごとの税務上の取扱い、Exclusion Amount等を考慮して計算します。

すべての資産がMark-to-Marketの対象になるわけではありません

   ここは非常に重要です。
Covered Expatriateになったからといって、
すべての財産を同じ方法で「前日に売却した」として計算するわけではありません。

特に次の項目には、通常のMark-to-Marketとは異なる特別ルールがあります。
Eligible Deferred Compensation Items
Ineligible Deferred Compensation Items
Specified Tax-Deferred Accounts
Nongrantor Trustの受益権

そのため、一般の株式、不動産、暗号資産等と、
退職口座・Deferred Compensation・Trustは分けて分析する必要があります。

401(k)、IRAなどの退職口座には特別ルールがあります

   401(k)、IRAその他の退職口座について、
「Covered Expatriateになると、すべて放棄日前日に売却したものとして課税される」
と説明されることがありますが、正確ではありません。

制度によって異なる特別ルールが適用されます。

Eligible Deferred Compensation
→ 将来の課税対象分配に原則30%の源泉徴収

Ineligible Deferred Compensation
→ 原則として放棄日前日に一定額を受け取ったものとして課税

Specified Tax-Deferred Account
→ 原則として放棄日前日に全額分配されたものとして扱う

Nongrantor Trust
→ 将来の課税対象分配時に特別な源泉徴収

これらについては、IRS Notice 2009-85に詳細な取扱いが定められています。
Form 8854のInstructionsでも、401(k)等を含むDeferred Compensationについて
特別な分類・報告ルールが示されています。

また、Covered Expatriateの場合には、対象となるDeferred Compensation、
Specified Tax-Deferred Account、Nongrantor Trust等についてForm W-8CEが関係する場合があります。

Form W-8CEは通常IRSへ直接提出する書類ではなく、
関係するpayer、custodianまたはtrustee等へ期限内に提出する書類です。
IRSのForm W-8CEにも「Give this form to the payer. Do not send to the IRS」と明記されています。

したがって、
401(k)
Traditional IRA
Roth IRA
Pension
Deferred Compensation
Stock Compensation
外国の退職制度
Trust
については、それぞれ制度内容を確認する必要があります。

Form 8854と最終年度の米国確定申告

  市民権やグリーンカードを終了する移民法上の手続きと、IRSに対する税務手続きは別です。
Form 8854は、市民権やグリーンカードを放棄するための移民手続書類ではありません。

Form 8854は主に、
Expatriation Date
過去5課税年度のTax Compliance
全世界の資産・負債
Covered Expatriateの判定
Mark-to-Marketに関する情報
Deferred Compensation
Tax-Deferred Accounts
Trust
などをIRSへ報告する税務書類です。

Initial Form 8854は、原則としてExpatriation Dateを含む年度の所得税申告書に添付します。
その年度に所得税申告書の提出義務がない場合でも、

通常、その申告書の提出期限までにForm 8854を所定の提出先へ提出する必要があります。
放棄年度の最新Instructionsを必ず確認してください。

放棄年度には状況に応じて、
Form 1040
Form 1040-NR
Dual-Status Return
等の提出が必要になります。

また、放棄年度中に米国人として扱われる期間がある場合には、
Form 8938やFBARなどの国外金融資産報告についても確認が必要です。

必要なForm 8854を提出しなかった場合、必要事項が欠けている場合、
または誤った情報を記載した場合には、合理的な理由が認められない限り、
$10,000のペナルティが課される可能性があります。

Covered Expatriateになった後も重要な税務問題があります

   Exit Taxを支払えば、すべての問題が終了するとは限りません。

Covered Expatriateが、Expatriation後に米国市民または米国居住者へ一定の贈与または遺贈を行った場合には、IRC Section 2801による税金が受取人側で問題となる可能性があります。

たとえば、将来、
・米国に住む子ども
・米国市民の子ども
・米国居住者となった家族
へ財産を贈与・相続させる予定がある場合には、
この制度もEstate Planningの中で確認する必要があります。

Covered Expatriateから米国市民または米国居住者がCovered GiftまたはCovered Bequestを受けた場合、
原則として米国側の受贈者・受遺者がForm 708を使用して申告し、
Section 2801の税金を負担する可能性があります。

IRSもForm 708を、Covered Expatriateから一定の贈与・遺贈を受けた米国市民・居住者等が
Section 2801税を申告・納付するためのフォームとしています。

Covered Expatriateの判定は、Exit Taxだけでなく、
将来の家族への資産承継にも影響する可能性があるという点が重要です。

Sailing Permitについて

なお、一定の外国人には、米国出国時にSailing Permit(Departure Permit)が関係する場合があります。
これはExit TaxやForm 8854とは別の制度です。

該当する場合にはForm 1040-CまたはForm 2063等の手続きが関係するため、出国前に要否を確認しましょう。

「200万ドルを下回ればよい」と単純に考えないこと

よくあるご質問の一つが、
「資産を家族へ贈与して、放棄日までに純資産を200万ドル未満にすればよいですか?」
というものです。

しかし、これは単純ではありません。

資産の移転には、
米国Gift Tax
Form 709
資産評価
配偶者の国籍
受贈者
Basis
日本の贈与税
将来の相続税
Estate Planning
などの問題が生じます。

また、形式的に名義だけを変更しても、実質的な所有権が移転していない場合には、
期待した税務効果が得られない可能性があります。

実際、Form 8854のInstructionsでも、過去5年間に純資産が200万ドル以上だったものの、
放棄日時点では200万ドル未満となった場合には、資産・負債の大きな変動について
Form 8854で説明することが求められるケースが示されています。

したがって、贈与や資産移転はExit Taxだけを目的として判断するのではなく、
米国と日本の所得税・贈与税・相続税および家族全体のEstate Planを含めて検討する必要があります。


Exit Taxは連邦税ですが、州税も確認しましょう

Exit Taxは米国連邦税の制度です。

そのため、ニューヨーク、カリフォルニア、テキサス、フロリダ、
ハワイ、イリノイ、マサチューセッツその他、どの州に住んでいる場合でも、
米国市民またはLong-Term ResidentとしてExpatriationを行う場合には連邦Exit Taxの確認が必要です。

一方、
State Residency
Domicile
州内不動産
Business Income
Stock Compensation
Retirement Income
等の州税上の取扱いは州ごとに異なります。

したがって、日本への本帰国時には、連邦のExit Taxだけでなく、
現在の居住州とのResidency・Domicileを適切に終了できているか、
最終年度の州税申告が必要かについても確認することが重要です。

放棄前チェックリスト

Exit Tax Planningで最も重要なのは、
実際に市民権やグリーンカードを放棄する前に分析することです。

主に次の項目を確認します。
Long-Term Residentの8課税年度要件
正確なExpatriation Date
過去5年間のForm 1040等の申告
Form 8938、5471、3520、3520-A、8621等の国際税務申告
FBARの提出状況
全世界の資産・負債
$2,000,000 Net Worth Test
5年間のAverage Annual Net Income Tax Liability
不動産・株式・事業持分等のTax Basis
現在のFair Market Value
401(k)、IRA、年金その他のDeferred Compensation
Trust
日本法人・米国法人等の事業持分
2026年の$910,000 Exclusion Amount適用後の税額
放棄時期を変更した場合の税額
州税
日本帰国後の米国資産および米国所得
将来の贈与・相続に対するSection 2801

放棄前のご相談

Exit Taxは、単純に資産額だけを確認して判断できる制度ではありません。

過去の申告状況、グリーンカード保有課税年度、資産のTax Basis、
Fair Market Value、退職口座、事業持分、Trust、放棄時期等によって結果が大きく変わります。

特に次のような方は、
正式な放棄手続きを始める前に専門家へ相談することをおすすめします。

米国市民権の放棄を検討している方
グリーンカードを長期間保有している方
日本への本帰国と同時にグリーンカード放棄を考えている方
全世界の純資産が200万ドル前後またはそれ以上ある方
米国または日本に大きな含み益のある不動産・株式を保有している方
401(k)、IRA、年金、Deferred Compensation、Stock Compensationを保有している方
日本法人、米国法人、Partnership、LLC等の持分がある方
TrustのGrantorまたはBeneficiaryである方
過去のForm 1040、Form 8938、Form 5471、Form 3520、Form 8621等に不安がある方
FBARの未提出年度がある方
将来、米国市民・米国居住者の子ども等へ財産を承継する予定がある方

尾崎真由美会計事務所では、特定の州に限定せず、
米国全州および日本からオンラインでご相談いただけます。

市民権またはLong-Term Residentとしてのグリーンカードを放棄する前に、
Covered Expatriate判定
Long-Term Resident年度判定
過去5年間のTax Compliance Review
全世界の資産・負債の確認
Tax BasisとFair Market Valueの整理
Exit Taxシミュレーション
退職口座・Deferred Compensation分析
Form 8854
放棄年度の米国確定申告
将来のSection 2801・Estate Planning上の影響
などを確認いたします。

Exit Tax Planningは、「放棄した後」ではなく、「放棄する前」に行うことが重要です。


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本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的・税務的な助言ではありません。
個別のケースについては専門家へご相談ください。

尾崎真由美会計事務所

日本語フリーダイヤル: 1-877-827-1040

メール: info@1040me.com

ウェブサイト: https://toddaccounting.com/

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正しく・安全に・そして有利に。
まずは一度、専門家に確認してみてください。