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相談者急増!看護留学の代わりに「オペア」で渡米。その代償は…

オペア留学の相談が急増

以前、NHKで“海外に出稼ぎに行く日本人”といったテーマでドキュメンタリー番組が放映されたそうです。円安ドル高が続く状況も手伝い、海外で働きお金を貯める若者が増えているという内容でした。
稼げない日本を出て海外生活に夢を見い出す。背景や状況は異なりますが、アメリカ看護留学を目指す人たちにも、このような“発想の転換”をする人が増えています。それは「オペア留学」です。本コラムでオペア留学について書いた「第119回:アメリカで看護師になりたい人は必読!その選択でホントに大丈夫?①『オペア』」はとても大きな反響がありました。興味のある方は、ぜひご一読ください。


オペア(au pair)とは、ベビーシッターとして海外の一般家庭に住み込みで働くことができる留学制度で、期間は3カ月~2年間です。弊社には以前からオペア留学に関する相談をいただく機会が多く、全米各地(ワシントン州シアトル、カリフォルニア州サンディエゴ、イリノイ州など)からはもちろんのこと、最近ではニュージーランドやカナダ、オーストラリアからもご連絡をいただきます。


オペア留学の目的や条件など、全て承知した上での留学だったものの、ベビーシッターで面倒を見る子どもの多くは、言葉もままならない年齢で、さらに仕事や旅行で外出することが多い家庭でのベビーシッターなので、大人と英語で会話する機会はほとんどありません。また、有給とは言え、生活するのがやっとで貯金はできないと思ったり、看護師として働きたいのにこのまま時間を無駄にしてよいのかと思ったりする人も多いようです。


以下は、弊社に実際に寄せられたご相談内容の一部です。

 

ケース1 Aさん

ベビーシッター以外の業務でオペア終了へ 

 Aさんは、オペア留学中にたまたま日系医師のクリニックで「日本で看護師の経験がある」ということを伝えたところ、無給のインターンとして受付をすることになったそうです。しかし、無給で働くはずが書類にSSNを記入したため知らないうちに、クリニックでの有給扱いとなり、オペア留学を終了せざるを得ない状況になっているということでした。確かに、アメリカのオペア制度は合法で、語学留学では取得できないSSNも与えられるという利点があります。Aさんの場合、オペア留学でベビーシッターとして給料をもらうという目的からは外れてしまい、規則違反で留学を断念することになったのです。

 

ケース2 Mさん

オペアビザからの変更は要注意

「オペア留学で取得したビザを学生ビザに変更したい」と弊社にご連絡をいただいたMさんは、シアトルで2年間のオペアを予定していましたが、6カ月が過ぎたところで日本に帰国しました。日本で看護師として働くのがいやでアメリカへ来たはずが、いつの間にかSNSで国際看護師を目指す会や、アメリカで働く日本人看護師のインスタのグループに参加するようになったのがきっかけで、オペア留学を終了し、今度は学生ビザを取得して再渡米することを決めたそうです。日本に帰国後、SNSで知り合った人に「『アメリカ看護(弊社)』は、ビザは必ず取れるけど費用が高い。ビザは自分で取得できる」と言われたそうです。しかし、自分でビザを取得することに不安を覚えたMさんはその人にサポートをお願いしました。謝礼金1000ドルを支払い、語学学生として学生ビザ取得の手続きをしてもらったのですが、それが大失敗!結局、学生ビザが取れず困って弊社に連絡をしてきたということでした。

 

ケース3 Eさん

他国でのインターン経験はアメリカ看護師の糧になる?

最近多いのが、アメリカ以外の国にオペア留学し、現地で無給インターンをしながら、週に2~3回程度、無料の英語クラスに参加しているケースです。オペア留学は子どもの世話や家事をして働くことが条件ですが、「ケース1」のように医療関係の無給インターンをしている人が多いのです。特にロングタームケア(長期)での介護助手や個人宅への派遣が断然多く、語学学校でレベル5、6になると、その後は医療英語クラスを受講するそうです。

ご相談をいただいたEさんもそんな留学生の1人で、現在アメリカ以外の国で医療英語を学び、住み込みで介護助手をしています。Eさんは「インターンの経験はアメリカの看護師の経験として認められる」と話していました。

私はアメリカ看護留学を支援する者として、医療従事者を雇用する会社や面接官、人事の方たちと雇用条件について話をしたり、また実際に私もその雇用に携わったりしているのでとても驚いてしまいました。残念ながら、Eさんが信じている「他国での介護助手は将来の経験値になる。アメリカ看護留学に変更して看護師として永住権スポンサーも探すことができる」というのは、「うわさ」に過ぎず事実ではありません。

「うわさ」と言えば、私が、セミナーやカウンセリングなどで参加者の皆さんに必ずお伝えしていることがあります。もし皆さんが、留学斡旋業者やアメリカで看護師経験のある(あった)日本人から「日本で看護師の経験があれば、アメリカのビザを取得の際の面接でとても有利」「NCLEXに合格すると、永住権が簡単に取れる」という話を聞く機会があっても信じないでください。これは全くの「デマ」で、そのような事実はありません。

 

再渡米が却下されるケースも!
「ケース2」のMさんのように短期間のオペア留学を終え、アメリカに再度渡航するために、新たにビザを取得しようとして却下されている人も少なくありません。これは3カ月未満の短期オペア留学で、5年間の学生ビザを取得した場合です。

まず、オペア留学であろうと、語学留学であろうと、1回目の渡航時のビザを取得する際は、ビザの有効期間を十分に考慮する必要があります。それは2回目のビザを申請をする際に問題になるからです。2回目のビザを申請すると、面接時に「ビザ申請は初めてか」「目的は何か」などが問われます。回答次第では却下されることもあり、実はこのようなケースが年々増えているのです。

ビザの有効期間は2年や5年など渡航の目的により異なるのですが、3カ月未満の滞在であれば、ビザを取得することはお勧めしません。オペアで最長2年間のJ-1ビザを取得し、たとえアメリカに滞在している時に5年間の学生ビザに切り替えしたとしても、日本に帰国すると必ずビザの面接を受けなければなりません。そして、1回目のビザと内容が異なると、2回目のビザが下りることはほとんどないのです。その理由は、オペア留学(ベビーシッター)と看護留学の関連性が全くないからです。

将来、アメリカで看護師として合法的に働くことを考えている方であれば、安易な渡米方法に飛びつかず、ビザの種類、期限、進学、就活などについて、事前に十分に調べ、計画を練ってから進めていくことをお勧めします。

※ビザや法律などに関する内容は一般的なものです。個々のケースによって異なるため、詳細は必ず専門の弁護士に確認してください。

 

星宣子から
 結論から言えば、アメリカで看護師になるために、オペア留学(もしくは語学留学)をすることはあまりお勧めしません。その理由は、前述のようにアメリカで滞在するための再渡航時のビザ取得の審査が厳しくなるためです。看護師になる前に語学力を付けたいというのであれば、英語圏に語学留学しなくても、日本で働きながらオンラインで英語クラスを取ることをお勧めします。どうしても渡米したいなら、休暇を取って下見を兼ねていくのもよいと思います。

アメリカを含む留学経験者の多くは、再渡航の際、資金調達に時間を要している人が100%。また、ビザなどの問題で、手続きを一からやり直すケースも多く、時間と資金を理由に、結局アメリカ看護留学を断念している人が少なくありません。渡米してもビザが取れない場合は、アメリカ市民とビザ取得のためだけの契約婚をする人もいます。


 看護留学を目指すなら、安易な方法に飛びついたり、人の話をうのみにせず、どんな方法があるのか、自分が目指すゴールに沿っているのか、問題があるかどうかをきちんと見極める力を付けて欲しいと思います。